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空がオレンジ色に染まっている。鮮やかな夕焼けを見ると思い出すものがある。『この胸のときめきを』(原題『君なしに生きていられない僕(Io che non vivo senza te)』)だ。イタリアの楽曲で、ピノ・ドナッジョによって作られた。
だが、ダスティ・スプリングフィールドや、特に後にカヴァーをしたエルヴィス・プレスリーで知った方も多いだろう。
私の場合は、父が持っていたアルバム「シャンソン&カンツォーネ集」がきっかけだ。そのアルバムに収録されていたのが『この胸のときめきを』だったのだ。 オーケストラによる演奏だけの収録曲であった。
そして、頭の中で流れるのは、決まってこのインストゥルメンタルのほうである。美しい夕焼けを見ると、脳内でこの曲の再生が始まり、やがて思い出される景色のBGMとなっているのだ。
その景色とは、イタリアの街角にあるカフェ。夕陽に包まれたオープンテラスで、人々がコーヒーとともに、思い思いの時を過ごしている。 鮮やかなオレンジ色の空、その光が差し込むカフェは、とてもロマンチックだった。 そんな1枚の写真が、私をセンチメンタルな世界へと誘う。それが『シャンソン&カンツォーネ集』、このアルバムの中に収められていた景色であった。
子ども時代に何度も聴いていたアルバムだ。だから、ジャケットを開く度に、この写真を目にしていたわけだ。
今はもう、そのアルバムは手元にない。だが、そんな1枚の風景は、いまだに私の記憶に留まっている。昔から幾度となく、本物のこの場所へ行ってみたいと思っていた。 思っていたまま、もうこんな年になってしまった。この先、行けることはあるのだろうか。
だが、こういった雰囲気のテラスならば、都内にもちょっとばかし似たようなカフェがあった気がする。
とりあえずは、表参道のカフェにでも行こうか。それも悪くない。