エッセイ

夕方の景色は思い出の香り

ノスタルジックな夕暮れ時

 夕方の景色は、ふと人恋しさや淋しさに揺らぐことがある。夕陽がセンチメンタルな気分にさせるせいか、昔体験した景色が蘇ってくることがある。

 子どもの頃、近所で遊んだ帰り道、どこからか漂ってきた夕食の匂い。

 あ、カレーだ!
 あ、煮物を作ってるのかな。

 台所から風に乗ってやってくる料理の匂い、それは暖かい家庭を連想させた。
 
 細い道の商店街、夕暮れ時はまだまだ人々が行き交う時間だ。スーパーではなく、肉や野菜を売る個人商店が軒を連ねている。

 お惣菜屋さんもちらほらある。そして、揚げたてのほくほくコロッケが美味しかったりもする。

 そんな下町の懐かしい風景が好きだ。ノスタルジックな夕暮れ時。

 先日は、鮮やかな夕日を見るとヨーロッパのカフェが浮かび、「この胸のときめきを」が流れる話をした。

 だが、今日は日本の下町が恋しい日だ。 明日は、どんな夕暮れ時を過ごすだろうか。

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